相棒

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ロベルトにはどうにも解せないことがある。 「ま、待て!!」 ロベルトは叫んだ。そしてひたすら標的を追って走った。ターゲットの男までの距離は40メートルほど。これがなかなか縮まらないのだ。ターゲットが右に曲がる。ロベルトも続いて右折しようとした。が、そこで足がもつれた。 「のわっ!」 見事に地面に叩きつけられる。こんなに派手に転んだのは久しぶりだ。今自分のこの姿を見たら、かの勝ち気で快活な幼なじみの少女は、指をさして笑うだろう。 「くっそ…」 すぐ立ち上がって追いかけようとした時、頭上すれすれを勢いよく何かが通り過ぎた。急いで地に頭を伏せる。 「…あっぶね」 地面から顔だけあげると、前方にターゲットの男が一羽の鴉に襲撃され、横転しているのが見えた。ロベルトはうつ伏せになったまま、呆然とその光景を眺めていた。 * 「連続万引き事件の犯人、現行犯逮捕っと」 クロウがお縄にした男を警察に引き渡し、朗らかに言った。後ろからロベルトが駆けつける。その姿は土埃まみれだ。 「は、はぁ…つか、まったのか…!」 「おう、お疲れロベルト君。…大丈夫か?」 ロベルトのドロドロの全身を見て、クロウは少し眉をひそめた。すると、上空から先ほどの鴉がクロウの元へと舞い降りた。その鴉の足には赤いリボンが巻かれている。だからロベルトにもその鴉が、ワルター、と呼ばれているクロウの愛鴉であることがわかった。 「いや~よくやったワルター!またもやお手柄だ。さすがは俺の相棒」 自身の腕に誇らしげにとまるワルターを、クロウは満足げに撫でた。そしてすたすたとロベルトを置いて、家へと帰るようだ。その様子をロベルトが後ろからぼーっと見ていると、最後にクロウが一度振り返りこう言った。 「おいてくぞー助手兼雑用係ー」 その呼びかけに腑に落ちないまま、ロベルトはとりあえず彼の背中を追った。
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