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「・・・・・・」
『・・・・・・』
「・・・・・・」
『・・・・・・』
「・・・・・・おい!」
『は、はい!』
シャムに色々と訊きたいことがありつつも黙ってろと言われてしまった以上無闇矢鱈と喋る訳にもいかず、悶々としながらもシャムの後ろを着いて行ったユーリだったが突然不機嫌そうにシャムに呼ばれ、吃りながらも返事をした。
振り返ったシャムは犬歯を剥き出しにしてまるで威嚇でもしているような表情をしている。
「さっきからじろじろと何見てんだ。あ゛ぁ?言いてぇことがあんなら言えやこら」
『・・・・・・』
黙ってろと言われたから黙っていたのに。
なんてシャムの理不尽な発言にユーリは怪訝な表情をしつつもこれ以上シャムを煽らないようにと早速本題に入った。
『それでは遠慮なく・・・あの、先程、シャム・・・さん達は生き物じゃないって言ってましたけど、あれはどういう意味なんですか?』
「・・・あぁ」
意を決して気になっていたことを訊いてみたユーリだったが、当の本人はなんだそんなことかと言わんばかりに小さく息を吐いた。
「どういう意味も何も、そのままの意味だ。お前は道端に生えている草木を生き物と認識しているか?山間を流れる川を生き物というか?」
『言わない・・・です』
「それと同じだ。俺たちはクリフさんが持っていた剣や移動する際に使ったあの扉と同じ。ここから造られたんだ」
そう言ってシャムは歩みを止めると獣の足で真白の地面を撫でた。
思わずユーリは地面を撫でるシャムを見つめた。
先程会った人たちも、目の前にいるシャムだって生前ユーリが出会った人たちと何ら変わりないように思える。
普通の感情を、意思を持った生き物だ。
『でも、貴方たちは自分の意思を持ってるじゃないですか・・・』
シャムの言い方がまるで悲観的に思えて、ユーリは咄嗟にそう言い返した。
しかしシャムは眉間に皺を寄せたまま地面を睨みつけるように見ている。
「そう思うか?そう、思われるように造られてんだよ」
『っ誰にですか?』
思わず強めに聞き返すとシャムは地面から視線をユーリに移した。
その瞳には今までユーリに向けられていた苛立ちや警戒心が見られない。
ただ、そこにある物を見つめるかのような無機質な瞳にユーリは唇を噛んだ。
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