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「それで偶にてめぇみたいな才があるやつを見つけるとスカウトする」
『そ、そうですか・・・』
てめぇの部分でびしっと指をさされ、ユーリは思わず口元を引きつらせた。
眉間に深い皺を刻んだままシャムはふんっと鼻を鳴らしユーリに背を向ける。
シャムにバレないようにと小さく息を吐いていたユーリだったが、ふと視線をシャムの背中から流れのある崖の方へと向けた瞬間、その視界を何かが掠めた。
またあの気味の悪い生き物が現れたのかと身を硬くしたユーリだったが、その心配は杞憂に終わった。
「シャーム!!」
ユーリの視界を掠めたものの正体は、シャムの仲間だった。
崖の下から跳ねるかのように飛び出してきたその人物は、戯れるようにシャムの背中へと飛びついた。
それにシャムは一瞬驚いたようだったが、直ぐに平静を取り戻す。
「何だよ。離れろ、うぜぇ」
「冷たいー!!」
きゃっきゃっとシャムに絡むその人物は髪が長く、身体も先程の彼等と比べると大分華奢だった。
線の細さから、どうやら女性のようだ。
男性しかいないのかと思っていたユーリは目を瞬かせながらシャムと彼女のやり取りをただ見つめる。
しかしふと視線を感じ、ユーリがそちらに目を向けると崖の淵から大勢の頭が覗いていた。
思わずぎょっとしてユーリはそれを見つめる。
崖の淵からこちらを覗いているのはシャムの仲間達だ。
しかし、先程シャムに飛びついた彼女と同じようにそこにいる人達は皆一様に小柄で女性的な顔立ちをしている。
一体彼女達はこんなところで何をしているのだろうか。
「おい、ボケっとすんな」
『っだ!!』
ユーリがこちらを覗く彼女達に目を奪われているとシャムに脇腹を小突かれた。
否、小突くというには些か強すぎるそれはもろにユーリの腹へと入り、ユーリは思わずその場所を抑えて身を丸めた。
しかしシャムは鼻を鳴らすばかりで謝る様子はない。
バイオレンスすぎるとユーリが思っていると先程までシャムに戯れついていた彼女が心配そうにユーリの顔を覗き込んだ。
「大丈夫?」
『はい、大丈夫で・・・』
その優しさに感謝しながら顔を上げたユーリは視界に入ってきたものに言葉を失った。
ユーリの視線を集めるのは、ただ一箇所。
本来女性ならば豊満な胸があるべきその場所は、見事なまでにつるりとしていた。
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