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その日依頼人がクロウを訪ねて来たのは、久しぶりにゆったりとした昼下がりのことだった。
依頼人は街の南にある娼館の経営者で、依頼内容は一人の娼婦の行方がわからなくなり帰ってこないので見つけ出してくれというものだった。
詳しい話は実際に店で話すということで、クロウは娼館まで出向くことになった。
「よし、ちょっくら行きますかね」
「行ってらっしゃいクロウ。気をつけて」
ロベルトの言葉にクロウがきょとんと目を瞬かせる。ロベルトもそんなクロウにきょとんとする。
「何?」
「何って。アンタも来るんだよ」
「え!?なんで!?」
完全に家で留守番をしておく気だったロベルトは驚いた。
「いやか?」
「だって…しょ、娼館なんて…だいたい今まで君一人でどこへだって行ってたろ!なんで今回に限って僕が行かなきゃならないんだ!」
「なんでって。アンタが必要だからだ」
ロベルトは目を白黒させた。あっけらかんとクロウが言い放った"必要"という言葉の甘さにぐらりときた。
「で、でも」
「…来てくれないのか?」
そう言って、眉を下げて小首を傾げるクロウの板についてる感といったらない。大の男がやって妙にハマってしまうのは、やはりその美貌のおかげか。ロベルトに選択肢など無いも同然だった。
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