透明人間児童福祉士、安奈

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臨死体験から私は双子の姉、玲奈から特別な力を授けられた。 「安奈、別れる前にあんたに有り得ないパワーをあげる」 そう言われ、姉は私の背中に手を当てた。 「いい?あんたは普通の人には有り得ない力を持った人間になるの。透明人間よ。この力はね、普通に日常を送れるけど、人に触れるだけで誰かの怪我を治癒出来る。身体だけじゃなく心の傷も。透明人間になって他人の家に侵入して見えない姿で近付き、その家の人が何らかの理由で心身共に傷ついていたら、その人に触れる事も出来る」 事故に遭ってから漸く目が覚めて意識を取り戻し、私は生存した。長い入院生活の中でリハビリをしていた時だ。 突然、自分の姿を消したり元に戻せるようになった。 両親や看護師は私に戸惑ったが、この能力は玲奈によって授けられたものだと説明した。両親は勿論疑ったが、その事を証明する為、母親の肩にそっと触れた瞬間、母の腕にあった何気無い小さな傷が一瞬にして治った。突然、現実離れした超人的能力を自然に得ていたのだった。 退院して、学校に登校してからも私の能力は大いに発揮された。 喧嘩していたクラスメイトの仲裁に入り、肩にそっと触れただけで彼女達はお互いに謝り、何故怒っていたか話し合える状態になっていた。 私はこの能力を同級生や担任に理解され難い時も多々あり、時には魔女というあだ名を付けられてからかわれたりもした。 次第に私は透明人間の力を活用して仕事に就きたいと思うようになった。何の仕事に就きたいか…凄く悩んだし、私は何になりたいか答えを探し続けた。 月日は流れ、高校卒業した私は、児童福祉の仕事に就きたいと思い、その資格の試験も受けられる大学に進学。 児童虐待、障害と福祉、児童心理…学ぶ事は沢山あった。就職活動と両立しながら資格の勉強と学生生活を送る毎日。 大学での実習として、児童相談所のボランティアも経験した。私が講義で学んだ内容よりももっと複雑で現実的な酷い経験をした子ども達に出逢った。彼らの心と体の痛みは想像を絶するもので、ネグレクト、身体的暴力、近親相や、誘拐等で「イタズラ」の被害者だった子どももいた。また、体に危害を加えず、心の傷を残す心理的虐待の被害に遭った子も。未だに消えない心身の傷を抱え、トラウマやフラッシュバックによる再体験をしてしまう子ども達のケアを学ぶのだ。
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