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なんでも、すい臓ガンだったらしいわよ。まだ50にもならないからね、進行がよほど早かったみたい。
そう。
僕は、相変わらず甘ったるく口内にドロリと溶ける紅茶をゆっくりと啜ると、ふ、と息を吹き出した。
あのさ、ピアノ、調律に出してもいいかな。
いいけど、でも、あなた以外誰もピアノなんて弾かないわよ。
いや、僕も暫くは弾かない。
じゃあ、なんで。
ピアノに申し訳ないから。
おかしなこというわねぇ、と母は小首をかしげたけれど、特に反対する理由もないようにみえて、僕は早速調律師に電話をかけた。
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