キミの背中に、手を伸ばす。

28/37
前へ
/119ページ
次へ
* 「おーっ、すげぇ! よく燃えてんなぁ。上から見おろしてるからな? いや、でも小規模のわりには本格的じゃん」  中夜祭の締めを飾る、生徒会主催のミニキャンプファイヤー。校舎の上階から見てるけど、結構、見応えがある。昔はもっと派手にやってたらしいけど、なんかの規制で、数年前から規模を縮小することになったって話だ。 「綺麗だなぁ」  ミニサイズでも充分。迫力あるし、綺麗だ。 「土岐も見てんのかな、これ。どの辺に居るんだろ。白藤ちゃんと……居るんだよな。一緒に……たぶん」  白藤ちゃん、さっきステージに駆け寄ってた。土岐とキャンプファイヤーを見る約束してたんだ。きっと。  あー、つき合うんかなぁ、あのふたり。  まぁ、そうなるよな。今までそうならなかったことのほうが不思議なくらい、土岐はあの子に優しかったもん。 「……やだな」  土岐が、特定の誰かといつも一緒に居る姿なんて、やだ。見ていたくない。  嫌なんだ。『俺の土岐』じゃなくてもいいから、誰のものでもいてほしくない。  俺のものにならなくてもいいから、土岐の隣には俺が居たい。 「はっ、馬鹿か、俺。何、言ってんだか」  今まで、そんなこと思ってる俺こそが、土岐の背中ばかり見てきたのに。  もう、やめたほうがいいのかな? あの背中に、手を伸ばすのは。どうせ、届かな……。 「――武田」 「うえっ? ととっ、土岐っ?」  えっ、なんで? なんで、ここに居んの?  驚きのあまり、窓枠にかけてた手を滑らせてガクッと床に片膝をついた。その俺に向かって近づいてくる姿は、紛れもなく、片想いの相手。 「土岐?」  目前まで近づき、俺を見おろしてくるソイツは、いつもの無表情。 「探したぞ」  けれど、少し息が上がってる。
/119ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2191人が本棚に入れています
本棚に追加