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「おーっ、すげぇ! よく燃えてんなぁ。上から見おろしてるからな? いや、でも小規模のわりには本格的じゃん」
中夜祭の締めを飾る、生徒会主催のミニキャンプファイヤー。校舎の上階から見てるけど、結構、見応えがある。昔はもっと派手にやってたらしいけど、なんかの規制で、数年前から規模を縮小することになったって話だ。
「綺麗だなぁ」
ミニサイズでも充分。迫力あるし、綺麗だ。
「土岐も見てんのかな、これ。どの辺に居るんだろ。白藤ちゃんと……居るんだよな。一緒に……たぶん」
白藤ちゃん、さっきステージに駆け寄ってた。土岐とキャンプファイヤーを見る約束してたんだ。きっと。
あー、つき合うんかなぁ、あのふたり。
まぁ、そうなるよな。今までそうならなかったことのほうが不思議なくらい、土岐はあの子に優しかったもん。
「……やだな」
土岐が、特定の誰かといつも一緒に居る姿なんて、やだ。見ていたくない。
嫌なんだ。『俺の土岐』じゃなくてもいいから、誰のものでもいてほしくない。
俺のものにならなくてもいいから、土岐の隣には俺が居たい。
「はっ、馬鹿か、俺。何、言ってんだか」
今まで、そんなこと思ってる俺こそが、土岐の背中ばかり見てきたのに。
もう、やめたほうがいいのかな? あの背中に、手を伸ばすのは。どうせ、届かな……。
「――武田」
「うえっ? ととっ、土岐っ?」
えっ、なんで? なんで、ここに居んの?
驚きのあまり、窓枠にかけてた手を滑らせてガクッと床に片膝をついた。その俺に向かって近づいてくる姿は、紛れもなく、片想いの相手。
「土岐?」
目前まで近づき、俺を見おろしてくるソイツは、いつもの無表情。
「探したぞ」
けれど、少し息が上がってる。
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