キミの背中に、手を伸ばす。

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「『探した』って、俺を? なんで? だってお前、キャンプファイヤーは?」  白藤ちゃんと一緒に居るはずじゃねぇの? 「お前、いつから演劇部になったんだ?」 「へ?」 「ここ、演劇部の部室だろう。なぜ、こんなとこに居る?」  唐突な質問だったけど、ぐるりと周囲を見回してから俺を見据えてきた訝しげな視線の意味に納得がいった。 「あぁ、お化け屋敷のための小道具を借りててさ、返却に来たんだ。そしたら窓からキャンプファイヤーがすげぇ綺麗に見えるから、思いがけず特等席ゲットで眺めてたとこ」  片膝をついた状態から立ち上がりつつ、この部室に居る説明をする。まぁ、ほんとはキャンプファイヤーよりもお前がどこに居るのかなって、ソッチのほうを気にして見てたけど。 「そういうことか。それなら、俺も特等席の仲間に入れてくれ」 「え? うひゃっ、冷たっ!」  立ち上がった途端に腕を引かれ、ぐっと近づいた顔に驚いてのけぞった俺の首筋に、すかさず冷たい感触が押しつけられた。 「何、これ! ひゃう!」」  驚きの連続で、おかしな叫び声を連発だ。 「差し入れもある。お前の大好物」  面白そうに口元を引き上げた土岐の右手が、俺のシャツの襟元から差し込んだ物をさらに押しつけてくる。これは、よく知ってる感触。ペットボトル飲料だ。 「ひゃ、ぁっ……」  冷たい容器を鎖骨の上でぐりっと回され、身震いとともに変な声が出た。
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