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よし。もう、言う。はっきり言う!
「武田。もしかしてお前、まだ気づいてな……」
「あー、土岐さぁ。俺ってばピュアなジャパニーズ男子だからさ。こういうボディータッチ風の友情表現には慣れてないんだよ。だからさ、この手……そろそろ離して、くんね……かな?」
はっきり言うはずが、ちょっと声が震えた。
けど、床を見ながら頑張って伝えた。俺の背に腕を回し、身体を支えてくれてる相手に。
これ以上ドキドキして、お前に俺の気持ち感づかれる前に、離れたいんだ。
「武田、俺を見ろ。今すぐに」
「え……」
真上から落とされた命令。
大好きな声に言われてしまえば、離れたいと思っているのに、つい素直に従ってしまう。
そうして見上げた土岐の瞳には、さっきと同じ“色”が浮かんでいた――――昏くて綺麗な黒色が。
「と……」
「もう、黙れ」
そして、言葉を封じるように、親指が俺の上唇に乗った。
「お前が喋っていい言葉は、ひとつもない。余計なことも何ひとつ考えなくていい」
ひそやかな声と、上唇をつうっと横に滑っていく指の感覚に、身体が再び固まっていく。
「ただ黙って、一度、頷くだけでいい」
ぼうっと暗い闇の中で土岐の薄い唇が綺麗につり上がり、妖艶な笑みを俺に落としてきた。
「俺に褒美、くれるだろ?」
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