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「さて、帰るか」
「うん」
土岐の身体が正面から俺の真横に移動した。並んで歩くために。
他の生徒たちは、グラウンドから門に直接向かってるんだろう。今、中庭の通路を歩いてるのは俺たちふたりだけだ。
『恋人同士』になった俺たちだけ。
でも、男同士だから、もちろん手なんか繋がない。
けどさ。時折、というか頻繁に肩が触れる。それほどの近い距離に、土岐が居るんだ。
これが嬉しい。堪らなく。
肩が触れても眉をしかめたりされないし、じっと見つめてても、怪訝そうにも嫌そうにもされない。
むしろ、無表情を緩めて、かすかに微笑んでくれるってオプションつきで。そりゃもう、天にも昇る心地なんだよ。
あー、それはそうとさ。土岐って、いつから俺のことを好きでいてくれたんだろ?
聞いてみたい。すごく。
けど、今日はやめておこうと思った。
だって、明日の約束ができたんだから。
土岐がそれを聞かせてくれるその時には、俺の十年ぶんの想いも、さりげなく伝えてみようか。
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