0人が本棚に入れています
本棚に追加
西暦1800年代。
病院でのレントゲン撮影がまだ始まったばかりの頃。
看護師の私が勤める病院で、その日はやってきた。
「先生!」
声を張り上げて呼ぶ。
先生はゆっくりと振り返った。
「どうした?そんなに慌てて。何か難病でも見つかったか?」
「それが…ないんです!」
「は?それなら良かったじゃな…」
「違うんです!臓器が…レントゲンに臓器がひとつ映ってないんです!」
その病気は突然見つかった。
『突発性臓器消失症』。
「おかしい…。何がおかしいって特に異常がないからおかしいんだ」
先生はうろたえた。
「臓器がないっていうのに、血液も体重も正常の人間と変わらないんですよね」
「まるで、そこにあるかのように。見えていないだけで、確かにそこにあって動いているように」
「見えない…臓器?」
その病気は医師たちの間で…
別名『透明な臓器』と呼ばれた。
その病気は治す方法も防ぐ方法も不明であり、人々は不安になった。
だが、少し不安になるだけでそれほど恐れる者はいなかった。
だって、健康だから。
臓器を失っても変わらずに過ごせていたから。
臓器をひとつ失うこの奇妙な病気は、急速に増加し続けた。
最初のコメントを投稿しよう!