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 サイコが左手で自分も太ももを軽く叩きながらいった。 「天童寂矢(じゃくや)少尉がデモンストレーションを披露してくださったので、わたしも東園寺の力の一端をお見せしましょう」  まさか須佐乃男(すさのお)操縦者候補の歓迎会で「呑龍(どんりゅう)」を使うのか。北不二(きたふじ)演習場の幹部や上司もたくさん同席しているのに。 「ほんとにだいじょうぶなのか」  タツオはつい口走っていた。この宴会場にいる100人強の進駐軍士官が全員「呑龍」の遅延された時間流に捕らわれたら、深夜になってもこの会は終わらないだろう。 「逆島少尉、心配は無用だ。わたしは亡き兄より『呑龍』の操作術に長(た)けている。兄は並みの才能だったが、わたしは違う。ジャクヤ少尉と同じように過去数代に渡るわが東園寺家の歴史のなかでも有数の『呑龍』使いといわれ、育ってきた」
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