第2回恋愛:「Blue fish」

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 次にここに来たのは、大君と付き合って1年目の頃だ。1年目記念にと、水族館に行ったのだ。  大君に恋をした水槽の前で、私と大君の手はもう既に繋がっていた。  大君がグイッと繋がった手をひっぱて自分の懐にポスンと引き寄せると、私達はこの巨大な水槽の中の、魚の一員になった。 「下、見て。ウミガメの上に乗ってる。」  私達の足元には大きな甲羅が広がっていて、ガラス越しなのにまるでそれに乗っかっているみたいに見えた。  ウミガメがノッソリ足元を通り抜け目の前のパネルに移動する。私達は、一緒に移動したようにそのウミガメを目で追った。  上手に向かってくる魚を避けながら、ジンベイサメの横を通る。 「冷や冷やしたね。」  私を胸の中に収めた大君が耳元で囁く。 「うん。サメに食べられちゃうかと思った。」  お互いの鼓動がドキドキ波打ちながら、心地よさに身を任せ水の中をスイスイ泳いでいく。  岩をよけ、魚の間を通り、水草に身体を潜らせながら、大君の胸の中でウミガメの甲羅の上にシンクロする。 「...見て大君、綺麗な魚。」 「可愛いいね。仲良しさんだ。」 「すっごい一緒に泳いでる。」  ウミガメは色とりどりの魚たちの中に入り込み一緒に泳いでいた。私は青い魚にそっと触れ、魚は指先にキスを落とした。
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