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「師匠~、待ってくださーい!」
ミランダは小道の果てに師匠ユリアスの姿を見つけて声を張り上げた。
ミランダは、ユリアスの一番弟子だ。師匠ユリアスの酒を買うために町に出かけていた。今から修行で遊泳山にこもるのに師匠の酒は欠かせないのだ。
家で待っているはずのユリアスはあまりにも遅い弟子の帰りに痺れを切らせ、山を目掛けて先を歩いていた。
先に行ってしまった師匠ユリアスをミランダは追っているところだった。
「師匠~!」
ミランダは走ってユリアスの袖を掴む。
「ミランダか。やっと追いついたか。」
「はぁ、はぁ…。置いていくなんて酷いじゃないですか~!!」
「ばかもん!! 師匠を待たせるなんて100年早いわ!」
ユリアスには詫び入れる気持ちはみじんこもなさそうだ。むしろ、謝れと言いたそうな勢い。
「師匠、はぐれたらどうするんですか? 方向音痴でしょ? 」
「喝! 弟子の癖に師匠を愚弄するとはッ!
東と西が微妙なだけで後は問題はない」
ユリアスは自信満々に言い切った。
「それを方向音痴というんです! 師匠が迷うたびに探すの大変なんですよー」
「お前の修行の為にわざとやっているんだ」
ミランダは師匠のこの迷言ぶりに軽くめまいを覚えるもいつものことだとスルーし、二人は仲良く遊泳山を目指した。
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