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気を取り直して、ユリアスは話を続けた。
「竜と山猫が仲良く水を飲み合っている。すなわち、ここ明道!!この土地に埋まる剣を持つもの、勇者なり!!」
ユリアスは珍しく熱く語っている。
安く転がった銀の剣は無造作に投げ捨てられている。
「勇者おめでとう!!」
ユリアスはミランダの肩を叩く。ミランダはことの成り行きに付いていけずに固まっている。
これから待ち受ける勇者の道を考えると得たいが知れない。
「ししょぅ~!! 勇者って何するんですか~??」
「古の人は言った。風に訊け、山に問え、己を信じろ!!」
「何ですかソレ?」
ユリアスは画面蒼白になったミランダを置いて先を歩き出した。ミランダは慌ててユリアスを追う。
「ししょぅ~!!! 無理です。イヤです!面倒臭いです!!」
「わしだってごめんだ。わしは遊泳山でお前の買った安い酒を飲むんじゃ。お前は世直しせよ」
「ししょぅ~、助けてくださいよ~!!」
その時、投げ出された銀の剣がゆらゆらと浮かび上がり、逃げ出す二人の後を追いかけてくる。そして、ものすごい勢いでミランダの右手に吸い付く。
「どうしよう!! 師匠、剣が離れません!!」
「勇者よ、くっ付くでない! わしを巻き込むでない!」
「勇者って呼ばないで下さい!! 酒を少し良いのに変えます! だから助けてください!!」
「わしは安い酒で構わん。だからはなせ!」
「師匠〜!どこ行くんですかー!? また、西と東間違ってますよ!
そっちじゃありません。こっちです。風が呼んでます」
「わしは呼ばれておらん。」
「師匠〜、一緒に行きましょうね。
何かわからないけど、倒しに!」
「勇者よ、は、な、せッ!!」
二人の旅は始まったばかり、...遊泳山は遠い。
《END》
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