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天使。それはこの世界においてごく普通に存在が認められている種族の一つだ。上空10キロ以上の高所をただひたすらに漂い続けているのを望遠鏡を使って確認するのはそう難しいことではない。時間はかかるが。
だけどそれ故に接触することはほぼ不可能だった。あまりにも高い場所に生息し、こちらから近寄ることが出来ない。そんな高所に行けるのはロケットだけであり、超猛スピードで生息圏を通り過ぎてしまう。かといってそこから戻る時も高速で突っ切るしかない。
それなら降りてくる時を待てばいいのだが、その気配すらないのだ。稀に地上付近に来ることはあるが、こちらから接触する前にあっという間に上空に戻ってしまう。食事や狩りをする時を狙おうとした人もいるが、そういう理由で降りてきた天使は記録にない。何を食べているのかですら不明だ。
いや、それどころじゃないだろう。そんな上空だとほとんど空気がない。そもそも息が出来ないし、仮に呼吸をどうにかできたとしても翼で飛ぶことなんかできやしない。それなのに天使は空を飛んでいる。
だから天使はこうも呼ばれていた--。未知存在。科学において解明できない神秘を秘めた、目に見える未知。それを解明しようとする馬鹿は後を絶たなかった。
--まあそれは僕--白銀彩(しろがねさい)も人のことを言えないんだけどね。僕自身、あの美しい翼で空を飛んでみたいんだ。
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