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--そこで”彼女”と視線があった。
一体いつからいたのだろう、純白だが薄袖のワンピースを着た見た目16歳くらいの少女。柔らかそうな栗色の髪が朝日を浴びて輝いている。それと同時にやわらかそうな羽毛が僕の視界いっぱいに広がる。
そこで僕ははっとする。とっさに窓を開く。が声が出てこない。
ベランダの手すりに腰を掛けている少女--その背中からはこれまた純白の翼が生えていた。2対の翼。それなのにそのうちの片方が半分ほどの長さしかなかった。が、その半分ほどの翼は目に見える速度で徐々に成長して大きくなっている。そんなありえない光景に言葉を失う。
「ここ、あなたの縄張り?」
そんな僕に対して少女--天使の方が口を開く。
「え、あ、うん、ここ、僕の家………」
反射的に返してしまう。あまりの光景に。常識はずれの現象に。なにより、その天使の声が鈴の音の様でとても心地よくて。
「ごめんなさい、飛べるようになったらすぐ出ていくから」
それだけを伝え、外をまた向く。あなたの領地を侵すつもりはない、という意思表示がしたかったのだろう。もうこちらには興味がないようだ。
「えっと………」
そこで僕は全力で頭を回転させる。どうする--?
「ならさ、待ってる間、中に入ったら?歓迎するよ?お茶くらいなら出せるし、これから朝食も食べようとしてたからよかったら一緒にどう?」
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