第2章 舞い降りたモノ

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そんな僕がやっとの思いで言ったのはこんな言葉。それを聞いた天使は再度こちらを向き、目をぱちくりさせる。 「朝食?お茶?」 ………その言葉の意味が分からなかったらしい。 「ほら、何か食べないとお腹すくでしょ?何も飲まないと喉乾くし」 なんでこんなことを教えるんだろう、と思いつつも言う。 「食べないとお腹すく?飲まないと喉乾く?」 天使が呟く。それと同時にきゅー、という可愛らしい音が聞こえた。 「お腹、すいてる?」 ちょこんと首を傾げる。そんな天使の様子に思わず苦笑してしまう。 「みたいだね。ほら、今から作るからそこで待っててよ」 と折り畳み式の小さなテーブルを出してその隣を指し示す。すると天使は素直にそこに座った。その際に翼からいくつもの羽が落ちた。それを見て軽く目を見開く。 --天使の羽、それが抜け落ちるなんて話は聞いたことなかったから。それどころか、地上に羽が落ちてきたことすらない。はるか上空に確かに暮らしているのに。 なのに今、僕の目の前で確かに抜け落ちた。それを拾って調べてみたい、という衝動に駆られるが、今は朝食の準備に専念する。天使の警戒心をなくせれば、今まで遅々として進まなかった天使工学--僕の研究課題に大きな衝撃を与えることが出来るはずだ。そのためならちょっとの我慢くらい、どうってことない。
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