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航はある事に気付いていた。
このおっさん、妻子がいる。
左手には指輪、ポケットから人がクレヨンで殴り書きされた絵が書かれた紙を出したりしまったりしている。
航は考えた。
(もしおっさんの妻子が生きているとすれば、住所を聞き出して会わせてやれば、成仏するんじゃないか)
「おい、おっさん、奥さんと子供はまだ生きてんのか?」
悠は航が言っている意味を瞬時に理解し、航が見ている方向に目をやる。
しかし、おっさんはなんの返答もせず、なんのアクションも起こさない。
「悠、ちょっとお前が聞いてみて」
恐らく憑いている人でないと、霊は聞こえないのだと航は考えた。
悠が航に言われた通りにおっさんに言う。
するとおっさんは嬉しそうににっこりした後、大きく顔を縦に振った。
「頷いてるぞ」
「マジか、したら住所聞くか」
悠が住所を聞く。
おっさんは口を動かしているが、霊感のない悠には声は届かず、おっさんの持ち主ではない航にも声が届かない。
おっさんはそれを察したのか、動かしていた口を止め、シュンとなっていた。
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