第1章

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透明人間。それは浪漫であり、人々の夢である。だが、実際なってみると不便で仕方がないものだろう。 例えば、誰かに声をかけるとしよう。声をかける相手は誰でもいい。母親、兄弟、友人、行きずりの人、店員、いろいろだ。けれど、もし、透明人間であったなら、それらの人々を困らせ、怖がらせてしまうだろう。あげく、誰もいないのに聞こえる声、なんて幽霊話になってしまうかもしれない。そうなると、店だった場合は売り上げ激減、友人はお祓いに行かなくてはなってしまうかもしれないし、家族だった場合病気を疑って病院のちの入院なんていう展開に発展する可能性がある。だから、透明人間というのは不便だ。声さえ発してはいけないのだから。声を発したら最後、皆が怖がって近寄って来なくなる。透明人間とはそういうものだ。 他にも透明人間の不便な所はある。項目にしてざっと二百七十六。しかし、その全部を紹介するのは難しい。なので、あとふたつくらいを紹介しよう。 不便その一、閉じ込められる。 透明人間だって人間だから物も食べるしトイレにも行く。だと言うのに、見えないもんだから、トイレなんかに閉じ込められることがよくあるのだ。デパートの中に閉じ込められるくらいならいい。いろいろ見て回れるし、食べ物もある。最悪なのが公園なんかにあるトイレに閉じ込められた時だ。たまに防犯のため、トイレが施錠される公園がある。そこに閉じ込められた時が本当に困る。鍵は内側から開けられないし、冬は寒く夏は暑い。最悪の環境だ。だいたい朝までは出られないし、便器に座ったまま夜を過ごすことになる。だから、閉じ込められないようにするのが大切なのだ。いや、閉じ込められてもいいが、閉じ込められる場所を選ぶべきだと声を大にして訴えたい。なので、最近はデパートに住んでいる。デパートは秋無くて楽しいので住む場所に困っているならデパートをお勧めする。 不便その二、謝ってもらえない
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