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開け放った窓から熱を孕んだ風が室内に入り込んできている。タッセルでまとめられていないベージュ色のカーテンが温い風に翻弄され、大きく揺れていた。窓の外からはセミが忙しなく鳴く声と道路を行きかう車のエンジン音が聞こえる。室内では中古の扇風機が異音を立てながら首を振って、人々へ健気に風を送っていた。けれど、懸命に風を送ってくれている扇風機には悪いが、髪をなびかせる風は室内にいる人間にちっとも涼を与えてくれていない。
どうして学校と言うところはエアコンを完備していないのだろうか。
熱に浮かされた頭でそんな恨みがましいことを思いながら、俺は一人、机に突っ伏していた。室内には四つの机が向かい合うように置かれており、俺はその一つに座っている。机に突っ伏しているのは、机が自分より冷たいかもしれないと思ったからだが、そんなことはなかった。
今、俺がいるのは科学部の部室だ。そして俺は科学部の部員である。もちろん、たった一人の部長で部員と言うわけではない。この夏の暑い時期にもかかわらず、職員室にしかエアコンを完備していない桜塚高校の科学部には俺を含め四人の生徒が所属している。一人は俺、川喜多典久。一年B組で出席番号十一番。目立った特技もない一般生徒だ。
なのに何故、今俺が一人かと言うと他の部員が全員、飲み物を買いに行ったからだ。俺も行くつもりだったのだが、誰か来るかもしれないからと一人残された。それもこれも全て俺がじゃんけんでグーを出したせいである。あの時チョキを出していれば俺も涼しい風を体感できたはずだった。
「たっだいまー! 飲み物買って来たぜ!」
なんて思っていたら他の三人が帰ってきた。この夏の暑さでも五月蠅い大声で無駄に元気に部屋に入ってきたのは牧方忍。オレの中学からの友人で腐れ縁、クラスも同じB組で、ついでに言えばこの部の部長でもある。長めの金髪を後ろで括り、コンビニ袋を大きく揺らしてはしゃいでいる。小さい子供のような様子に、お前は本当に高校生化と俺は内心で呆れた。
「待ちわびたぞ」
机に突っ伏したまま、偉そうに言えば大人っぽい笑い声が聞こえてくる。
「ひさくん、暑そうだね」
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