空気のように大切なあなたへ

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 私は思わずリョウタを見上げた。  こんなに強引に指輪を渡してきたというのに、リョウタの瞳は不安でゆらゆらと揺れている。  ……そうだ、リョウタは。  感情が表情に出ない分、瞳に出る人なんだよね。  私はスルリとリョウタの腕から抜け出した。  リョウタの腕から離れても、リョウタの瞳は迷いなく私の姿を捕えている。 「ひとつ、テストです」  私は指輪を指にはめたまま、クルリと反対側に回り込んで声を上げた。 「私は、今、どこにいるでしょう?  唇へのキスで答えてください」  言い終えるのと、唇に熱がともるのは、ほとんど同時だった。  腕で距離を測ることもなく、ちょっとかがんで唇だけで、リョウタは私に触れる。
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