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……見えていない、はずなのに。
このまま消えてしまえたらって、思っていたのに。
勘違いして一人で空回りして、見苦しいばかりの私なのに。
それでもあなたは、私を見つけてくれるんだね。
リョウタの首に腕をまわして、自分から残っていた距離を詰める。
それに応えるように、リョウタの腕が私の腰に回った。
甘い感触を堪能して目を開くと、すぐ間近にリョウタの瞳がある。
その瞳の中に、色を取り戻した私が映っていた。
「見えていなくても、アカリがいるってことは、ここに空気があるってことが分かるくらいに分かるんだけど」
きょとりと瞳をまばたかせる私に、リョウタはとろけるような甘い笑みを見せた。
「やっぱり、アカリは、見えていた方が嬉しい」
私はそんなリョウタの胸に顔をうずめた。
色んな意味で、きっと私の頬は今、真っ赤に染まっていることだろう。
……もうちょっとだけ、色を失っていても良かったのに
左手の指に輝く指輪を見つめながら、私は贅沢にもそんなことを思っていた。
《 END 》
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