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「……泣いてるのか?」
「泣いてなんかないっ!!」
叫んだ声は、もうごまかしが効かないほど涙に濡れていた。
いたたまれなくて、横へすり抜けて逃げようと体を翻す。
だがどうやって私の動きを読んだのか、リョウタは私の体を挟むように壁に腕を置いてしまった。
壁とリョウタに挟まれた私は、逃げ場を失ってしまう。
「どうして泣いてるんだ?」
「泣いてないっ!! 見えないくせに適当なこと言わないでっ!!」
「見えなくなっていることも問題なんだが」
私の姿なんて目に映っていないはずなのに、リョウタの瞳が、まるで見えているかのようにまっすぐに私の瞳を覗き込む。
ごつごつした太い指が、私の目元に伸ばされる。
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