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「あー、三咲優菜さん、あなたはブランドショップ、店名ブッチ銀座、でブランド品のセカンドバッグを一つ盗みましたね」
小さい窓からの明かりのみの薄暗いその部屋には、中年男性が突っ立っていて、睨み付ける先には、ちゃちなデスクとパイプ椅子に佇む、その部屋には全く不似合いなおしゃれで綺麗な若い女性がいた。
「私、やってません」
理不尽な取り調べに身の潔白を涙目に訴えて。
「あー、何度も言いますが、店員以外の目撃証言も有りますし、押収したバッグを持っていた、それが確たる証拠なのですよ」
「それは買った物です、ちゃんと調べて下さい、なんで信じてくれないのですか」
「あー、三咲さん、繰り返し訊きますけど、そのブッチのバッグはブッチ銀座店で、お金を出して購入した、と言う事ですよね」
「そうです、何度も言っているじゃないですか」
俯いたまま呟き、デスクに涙がこぼれ落ちた。
中年男性は顔をしかめ、続けて言った。
「‥‥とは言ってもねぇ、そんな事実は無いのだよ」
「そんな」
「待って下さい」
その時、この閉塞した空間に慌てて入ってきた男がいた、赤井であった。
息を整え、徐にオレは言った。
「部長、その女性は盗んじゃいませんよ」
「あ、あなたはあの時の」
「あー、赤井、どう言うことだ、言ってみろ」
「はい、まず、盗んだ方法ですが、店員の証言では、一瞬でバッグごと消えた、と言っていました、これでは曖昧で信憑性が無い、なにしろ人が一瞬で消えるなんて有る訳が無い、でしょ」
中年刑事は苦虫を潰した様な顔して応えた。
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