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「その女性が写っているのは約30秒、指輪を吟味しているシーンだけで、不思議な事に店内に入って来た映像が有りませんでした」
そのUSBを繋いだパソコンで女性が指輪を吟味しながら消えた瞬間の映像を繰り返し見て教授は言った。
「あり得ないねえ、あり得ないじゃないか透明人間なんて、なあ赤井君」
「え、あ、はい」
「でも、こうして犯罪に利用されているのが事実」
暫し黙って教授が結論を言った。
「透明になる仕組みは私には解けません、申し訳ない」
その言葉を聞いてオレは意外にガッカリした。
「いや、めっそうも無い、謝らないで下さい」
犯人逮捕に繋がるアドバイスを貰いに来ていただけなのに、いつの間にか謎解きの期待を生蛎教授にしている自分がいた、まるであの頃、生蛎先生の授業を聞き入っていた生徒だった時の様に新鮮な知識の味覚に脳は喜んでいた。
「なあ赤井君、科学とはね、人間が理解出来るようにと決めた、ただのこじつけさ、私は思うよ、人間の進化無ければ科学などいつも袋小路だと」
「今の科学では証明できない事象も人間の進化次第と言う事ですね」
「うむ、そんな所だ、ですが君のお目当ての彼女、その捜索のお手伝い位は出来そうだよ」
生蛎教授はニヤリとして言った。
「な、いやだなあ、あくまで犯人逮捕ですよ‥‥で、それは、どうやって教授?」
「フフフ、先生と呼んでくれたまえ赤井君」
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