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「まず、なぜ彼女はブランド品を盗んだのか、気まぐれ?お試し?わざわざセキュリティーの高い高級ブランド店で白昼堂々と‥‥」
「ブランド品が好きだから‥‥いや、だって透明人間になれるのですよ、セキュリティーなど無いに等しいでしょう」
「ならば、現金を盗んで、それで買えば良いだろう、銀行など、まともに金の有る所に堂々と入り札束の4、5個でも持って行けば良いだけ、その方が効率が良いのでは」
「た、確かに、ですが、札には通し番号も有りますし、警戒しての事だと」
実際、パチンコ店、宝くじ売場、銀行ではなくとも、現金が消えた、盗まれた等のニュースも報告も一切無かった。
「その警戒心の強い犯人が顔を出してまで何度もブランド品を盗みに行くのはなぜか、実際映像も撮られているのに、解るか、赤井君」
「そ、それは‥‥ブランド品が大好きだから」
「赤井君、専門分野はなんだったかね?」
「あ、ハイ、アジア文化を手広く、あと小学校の時から剣道をやってまして、それで警察官に」
「そうか、泰山の霤は石を穿つ、だな」
「え、ことわざですか」
「故事だよ」
クスッと笑った生蛎教授に苦笑いで応える。
「なんにせよ、犯人は自分に都合良く透明になれる訳では無いと推測できる、その能力には不確定要素が多々有るのだろう、私が思うに消え始めるのにタイムラグが10分前後、消えている時間もそう長くは無いはず」
先生が饒舌になってきた、のってきた証拠である。
「だからこそ犯人は高級ブランド品を選んだのだ、ブランド店なら商品の吟味で消えるまでの時間をごまかせる、そんな所じゃないかな」
オレは一瞬言葉を失った。
「はあ、感心しました、流石は環境生態学の権威先生ですね」
「ならば近隣の高級ブランドショップを引き続き張っていれば、また犯人が来るかもしれませんね」
「それと中古ブランド店もな、売りに来るかもしれん」
「確かに、所轄だけでも結構あるな」
「うむ、愚公、山を移す、と言ったところだな」
「はあ」
「頑張りたまえ」
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