陸蒸気

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タン、タン、タン、タン。 初めて聞く、規則正しい、独特な一定のリズムが足下から聴こえてくる。 そして、窓の外には、長く続いた世の中が大きな変化を遂げている最中の姿が広がる。 工事中の、赤い煉瓦の欧米風らしい建物。 ーーこれのどこがいいんだか。 木の温もり感じぬ、冷たい土ではないか。 『近代化された日本をずっと待っていた』 などと誰かは言うけれど、少なくとも僕は待っていなかった。 今までの、日本独特の美学が好きだった。 しかし、それらはあっという間に淘汰され、近代化という名の欧米化に呑みこままれていった。 ーー面白くない。 欧米が悪いとは言わない。 ただ、なんでもかんでも欧米の技術がいいとは思えない。
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