いつか、貴女と同じ月を

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 俺は溜め息をつきながら、手元に残された紙袋に視線を落とした。  紙袋といっても高級な店のショップバックといった雰囲気で、濃紺の艶のある材質の袋に月をかたどった銀のチャームが付けられた一品は、傍目から見れば硬質な素材で作られた鞄のようにも見えるだろう。  中を覗き込むと、リボンが掛けられた小箱と、その下に長方形の平たい箱が入れられているのが分かる。 「……?」  俺は留め金も兼ねていたチャームを丁寧に外すと、袋の中の箱を2つとも取り出した。  どちらも感触は軽い。  上に乗せられた小箱からは、微かに甘い香りがこぼれていた。  不器用に掛けられたリボンは、雅お嬢様が好んでまとう、穏やかなオレンジ色だ。  そういえば雅お嬢様の部屋に見慣れないラッピング専門書が置かれていたな、と頭の片隅で思う。
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