いつか、貴女と同じ月を

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 ああ、でも。  俺のためだけに作ってくれるというならば、それはそれで食べてみたい。  そこまで考えて、俺ははたとあることに気付いた。  2つの箱の中と紙袋の中を改めて探してみるが、目当てのものはありそうにない。 「……バレンタインデーは、気持ちを伝える日でもあるんですよ?」  このままでは、主から執事へ日ごろの感謝を伝えるものなのか、別の意味を含ませたものなのか、はっきり分からないではないか。  答えは分かっているような気もするが、はっきりと雅の口から聞かせてもらいたい。 「返事はホワイトデーに、なんて、悠長なことは言わねぇからな、俺は」  今の俺の顔には、極悪人のような笑みが浮かんでいることだろう。  その笑みを綺麗にかき消してから、俺は部屋を後にした。
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