いつか、貴女と同じ月を

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 誰かに、必要とされたかった。  最初はただ、そんなちっぽけな願いが、全てだったような気がする。 「とっ……と、ときっ、ときちょうっ!!」  それが『雅お嬢様に必要とされたい』という願いに化けて、どれほどの時が経っただろう。  素っ頓狂な声に、俺は読み上げていた書類から目を上げた。  俺の前に腰かけ、俺が読み上げる本日の予定を聞き入っていたはずの雅は、なぜかガッチガチに緊張していた。  その手にはいつの間にか、取っ手付きの紙袋が握られている。  ……というか、テメェ、俺の説明、一切聞いていなかったな? 「こ、こここここ……っ、これっ!!」  ニワトリか? というツッコミを口にするよりも早く、その紙袋は俺の方へ差し出された。  全く何事か理解できなかったが、俺は条件反射で紙袋を受け取ってしまう。  俺の手が紙袋を恭しく受け取ったことを確かめた雅は、淑女にあるまじき勢いでガタッと椅子を蹴って立ち上がった。
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