いつか、貴女と同じ月を

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 形だけ首にかけていたネクタイを片手で引き抜いて落とす。  空いた空間に箱から取り出したリボンタイを結んでみると、普通のネクタイよりも息苦しさは感じなかった。  机の上にある鏡をのぞいてみると、いつもより襟元が閉まり、少しだけ畏まった服装になっている。 「何といっても、俺の首に首輪を付けられるのは、雅お嬢様だけですから」  そんな自分の口元が、常にないくらい緩んでいる。  だが俺はそのことに気付かないふりをして、一度紙袋の中にしまった小箱を再び手に取った。  紙袋を先程まで雅お嬢様が座っていた椅子に置き、小箱をデスクの上に置いて丁寧にリボンをほどく。  雅お嬢様の髪に似た柔らかな手触りのリボンは、シュルリと微かな音を立てながらすぐにほどけた。
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