出会い

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「おはようございます。今日からよろしくお願いします。」 そう言って頭を下げた。 「瀬川 彩です。こちらこそ、よろしく。」 簡単に挨拶をして、彼にお揃いのエプロンを渡した。 まだ真新しいそれは、一見同じものとは思えないほどパリッとしている。リネンは使い込むほどに、味がでてくるものなのだ。 外の植栽の水やりや店内の小さな花瓶の水替えなど、細かな雑用を彼に任せて私はキッチンでの作業を始める。 シフォンケーキは毎朝自分で焼いていて、店の看板商品だから気が抜けない。 キッチンで作業しながらちらちらと彼の様子を見ていると、飲食店で働いた経験があるというとおり、いちいち言わなくても開店準備にどのようなことをしたらいいのかわかっている様子でひとまずほっとする。 目のあたりまでたらした黒い前髪が憂い気で感情が読めないが、黙々と作業する姿は好印象だった。
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