視線

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そこまでは覚えている。 これがいじめか、と気付くのに時間はかからなかった。 そのうちどんどんエスカレートして、私はもう限界を感じていた。 今日は靴箱から上靴が抜かれていたし、その代わりになんだかよくわからない虫が入っていた。 教室に入ると神崎さんとその仲間が「あー、ブスが来たぁー。」とクスクス笑い、他の子達はちらりと私を見る。 自分の席に座ると、机の上のなにかで指を切った。よく見ると机の裏から画鋲が刺さっていた。 神崎さんはクラスのボスで、その取り巻きたちと、クラスを掌握しているようだった。 やり方が汚くて、先生の前では絶対ばれないようにしている。むしろ、先生の前では私を友達だと言うくらいだ。 嫌がらせをされるのは、もちろん辛いけれど、それよりも私を見る視線が辛かった。 同情の視線を向けてくるのに、誰も助けてくれない。好奇の視線を向けてくる人もいる。どうしてだれもなにも言わないんだろう。 なぜ、なんで、どうしてみんな、わたしをみるの。 だから私は透明人間になった。
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