視線

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そんなある日、私は声を出したらどうなるんだろうと思い、授業中に「あ」と言ってみた。 小さい声だったにも関わらず結構な人数が振り向いた。ああそうか、声は聞こえるんだ、と思ったらイタズラをしたくなってきた。 初めは「ふふふ」と少し笑っていたら本当に面白くなってきて、大笑いしてしまった。見えていないのに声が聞こえる。どんな気分だろう、さぞかし怖いだろうな。 「あっはっはっは!」 そうして笑っていると、ぱし、と頭を叩かれた。 瞼を開いてみると、眼鏡をかけたの数学教師の顔が目の前にあった。手には私の頭を叩いた教科書を持っている。 ばっちり目が合っている。私は透明人間なのに。
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