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「うみ」
「うん。あの大きな海の底に、ゴクラクジョウドがあるんだよ」
「そっか、海か」
光俊は少し思案する様子を見せましたが、
「却下」
と、とみ子の案を退けました。
「ええ、どうして?」
「海って、怖くないか?」
「どこも怖いよ」
「怖いよなあ」
光俊は腕を組んで考え込みます。その顔は非常に苦しそうで、とみ子は心を痛めました。
「光俊は、死んだあとの、なにが怖いの?」
「どこへ行くか分からなくて、怖い」
とみ子は、光俊が死んだときに一人であるのが怖いのだな、と理解しました。
光俊が怖くないように、どうしたら安心させてあげられるのか。
とみ子はしばし考え込みました。
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