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ふと気がつくと、とみ子は暗闇のなかにいました。
とてつもなく永いあいだ、深く、これまでにないほど深く眠っていたような気がします。
大きな暗闇のなか、どうやら、わたしは死んでしまったらしい、ととみ子は理解しました。
この暗闇が死後の世界なのだと思いました。
暗闇のただなかで、何も見えなかったけれど、波の寄せる音が響いてきます。
もしかして、ここは、海辺なのだろうか。
まさか、本当にあの世が海なのではないか、ととみ子は驚きました。
正直、光俊を安心させたくて、海だなんて言ってみただけだったのです。だって、死後の世界なんて、とみ子は分からなかったから。
でも、ここが本当に海辺ならば、光俊を待つことができます。二人であの世に行くことができます。
約束が果たせる、ととみ子は気分が高揚するのを感じました。
とみ子は暗闇のなかで、なにかが起こるのをじっと待っていました。なにかが起こることを、なぜかとみ子は知っているのでした。
じっと待っているうちに、とみ子は大きなものにのまれるように眠りに似た感覚をあじわったり、また意識が浮上して考えたり、それのくりかえしでした。
幾度くりかえしたか、わかりません。
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