午後10時すぎ

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「ねえ、しょうへいくん」 「んー?」 包丁で野菜を切っているみきちゃんの隣で、僕は今、米をといでいる。 「みきのこと、好き?」 「え、うん、好きだよ」 いきなり平然と聞いてくるから、若干動揺しながら答えると、みきちゃんはあははと笑った。 「真っ赤になってる、かわいいー」 「男に可愛いはないでしょ……」 なんだか恥ずかしくて、真下を向いてごりごり米をといでいると、みきちゃんがぼそぼそと話し始めた。 「みきね、毎日しょうへいくんに会いたいの」 「だって、しょうへいくんのこと大好きなんだもん」 「しょうへいくんが大学に行ってるときとか、バイト先とか、女の子と仲良くしてないか、不安なんだよ」 「だって、しょうへいくんは私のだもん」 「しょうへいくん、浮気しちゃ、だめだよ?」 寂しげな声にひかれるようにして顔を上げると、じっとみきちゃんがこっちを向いていた。 「浮気したら……    ね?」 背中をつうっと冷たい汗が流れた。
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