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「…朝、出掛けに電話が掛かってきたんです。それに出たら、いつものバスに乗り遅れてしまって、遅刻寸前のギリギリで、課長に睨まれました。
次は、会議用の資料の部数を後輩が間違えてて、なんとか、会議には必要数揃えられたんですけど、会議の段取りしていたお局様には、あなたの指導がなってないからでしょうって、叱られたんです。はっきり言って、私のミスじゃないのに…。
それから、雑用を課長に押し付けられて、昼休み殆どなくて、私も、お昼食べそこねです…。
今は、係長の忘れ物をお得意先に届けにいった帰りなんですけど、朝の天気予報で、雨だって言ってなかったから、油断してたら、この雨でしょ。
今日に限って、いつもバックに入ってる傘が入ってないし…。
このまま帰っても、濡れ鼠の上に、帰りが遅いって、課長かお局様に、お小言言われるの目に見えてるし…。」
「OLさんも、なかなかに大変なんだね。」
「そうですよ!OLだって、大変なんですよ!…なのに、世のリーマンどもは、わかってないんですよ!
一生懸命、仕事に精出してたら、『結婚するまでの腰掛けなんだろう、そんなに、がむしゃらに、仕事しなくていいよ。』なんて言って、簡単な仕事しかやらせてくれない癖に、何かにつけて、あいつらは、気楽だの、給料泥棒だの言って、不平たらたらなんですよ。私達に、どうしろって言うんです。
本当に腹立ちますよ…。」
なんだか、いつのまにやら、人生相談みたいになってる。初対面の人にする話じゃないのにね。
「…男は出世だ、成績だって、目先のことだけに、とらわれがちだからな。うん、俺も、気を付けよう。誰かを傷付けてるかもしれないしな。」
「うわっ、すごく謙虚なんですね。内の社の男どもに、あなたの爪の垢を煎じて飲ませたいです。」
ニコッと笑うと、彼もニコッと、笑い返してくれたんだ。なんか、胸がキュンとした。
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