雨宿り

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1年近く経った頃。その日は、ゆっくりとお昼休みが取れたから、久しぶりに、社員食堂へ行ってみた。社食の中は、程よい混み具合で、無理なく席を見付けられた。 「うふっ。今日のランチは当たりだ。」 トレイの上のお皿には、私の好物ばかりが並んでいる。 「いただきます!」 いい感じに出汁の染みた煮物を口に放り込むと、これまた抜群の味。満足しながら食べていると、隣に座った経理の女の子達の会話が何とはなしに、聞こえてきた。 「…既視感って、知ってる?」 「デジャヴとか、言うやつでしょ。」 「そうそう。それよ、それ。それがさ、昨日、仕事終わった後ね…」 どうやら、昨日の帰社後、話をしている内の一人が、飲みに行ったお店で、それを、ものすごく感じるような出来事に出会ったらしい。 …既視感 …デジャヴ ああ!そうか! 唐突にわかった。私が、そして、たぶん…彼も感じていたものの正体が。 まるで、それは、ジグソーパズルの最後の一片が、バッチリはまった時のような、完璧な答えな気がした。 既視感…そう言うのは、何度か、私も体験してる。 来たことない場所なのに、来たことあるような気がしたり、懐かしかったりするのよね。 それは、人にも当てはまる。初対面なのに、何度も会ったことがあるような気がしたり、前から知ってるみたいな感じがするのだ。 初対面なのに、どこかで、会った気がするなんて、あの日の私達のようじゃない。 だけど…。それが、答えだとしたら、私は、なんだか寂しいな。 えっ?…寂しいって? 自分の心に、びっくりする。 寂しさを感じるほど、無意識の中で彼への想いを募らせていたのかなぁ。 私は、一体、何を期待していたんだろうか?
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