12人が本棚に入れています
本棚に追加
1年近く経った頃。その日は、ゆっくりとお昼休みが取れたから、久しぶりに、社員食堂へ行ってみた。社食の中は、程よい混み具合で、無理なく席を見付けられた。
「うふっ。今日のランチは当たりだ。」
トレイの上のお皿には、私の好物ばかりが並んでいる。
「いただきます!」
いい感じに出汁の染みた煮物を口に放り込むと、これまた抜群の味。満足しながら食べていると、隣に座った経理の女の子達の会話が何とはなしに、聞こえてきた。
「…既視感って、知ってる?」
「デジャヴとか、言うやつでしょ。」
「そうそう。それよ、それ。それがさ、昨日、仕事終わった後ね…」
どうやら、昨日の帰社後、話をしている内の一人が、飲みに行ったお店で、それを、ものすごく感じるような出来事に出会ったらしい。
…既視感
…デジャヴ
ああ!そうか!
唐突にわかった。私が、そして、たぶん…彼も感じていたものの正体が。
まるで、それは、ジグソーパズルの最後の一片が、バッチリはまった時のような、完璧な答えな気がした。
既視感…そう言うのは、何度か、私も体験してる。
来たことない場所なのに、来たことあるような気がしたり、懐かしかったりするのよね。
それは、人にも当てはまる。初対面なのに、何度も会ったことがあるような気がしたり、前から知ってるみたいな感じがするのだ。
初対面なのに、どこかで、会った気がするなんて、あの日の私達のようじゃない。
だけど…。それが、答えだとしたら、私は、なんだか寂しいな。
えっ?…寂しいって?
自分の心に、びっくりする。
寂しさを感じるほど、無意識の中で彼への想いを募らせていたのかなぁ。
私は、一体、何を期待していたんだろうか?
最初のコメントを投稿しよう!