憧れ

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木崎先生は慣れた運転で、病院の駐車場の端に車を止めた。 「どうぞ…」 エンジンを切って、 私に降りるように促すと、緩慢な動きで車から降りる。 その動きは木崎先生のお父さんにとても良く似ていた。 チャイムを鳴らすと、 シズさんが玄関先に出てきて 木崎先生にふんわりとした笑顔を向けている。 「おじさん…います?」 「あー…今日はそっちにいます。 こっちゃんに用があるって言って…」 そう言ってシズさんは、奥にある家を指さす。 古い洋館のお洒落な家… 長谷部と表札に書かれている。 早瀬先生の娘さんご一家がお住まいなんだろう。 少し、こちらの家で待たせていただくわけにはいかないかな? 何となく…初めて会う木崎先生のいとこに 緊張しているものあったけど、 何となく…この家に…入りたくないなぁ…と、 心の中がざわついていた。
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