第一章 一匹オオカミ

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前髪から覗いた目は、とても冷たく睨みつけていた。 気にくわない態度に笑っていた顔から笑みが消え、荒々しく壁に顔面を叩きつけた。 「ウッ」 と低い声をあげる。 口の中を切ってしまい、血が流れる。 鉄の味が口中に広がり、苦い顔をした。 顔を押さえつけたまま、片腕を後ろにねじ曲げた。 小さな悲鳴をあげる朝日に、四人はクスクス笑う。 胸元に抱きしめていた財布が、スルッと地面に落ちた。 もう一人の男子生徒が財布を拾い上げ、勝手に中身を調べる。 千円札を数え渋い顔をした。 「たったの三千円かよ」
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