半沢範子の憎しみ(3)

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「やめて! ポケットの中を探らないで!」 範子は、誰も助けてくれるはずもない校舎の屋上で、大声を上げた。 朱美、彩佳、正子の三人が、仰向けになった範子の体を押さえ、朋美が範子のポケットの中身を探った。 〈 どうしよう……。 私の大切な御守りが、取られてしまう。 お願い、やめて! 誰か助けて! 〉 範子のポケットの中から、朋美が御守りを取り出し、声を上げた。 「何なの、この古い御守り。 こんなものが、アンタの大切なものなの?」 朋美のその声を聞いて、範子の血の気が引いた。 あの大切な御守りが、二度と自分の手元に戻ってこない予感がして、範子は思わず、叫んでいた。 「お願い、私の大切な御守りを返して!」
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