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自分は決して、犬ではない。
自分はちゃんとした人格を持った一人の人間なんだと、範子は思い続けて、朱美の言葉を拒み続けた。
もしも自分が、朱美の言いなりになったならば、きっとそのときから、自分は自分をなくしてしまう。
そしたら自分は、本当にこのクズたちの犬になってしまう。
範子はそう思って、越えてはならない一線を守り続けた。
でも、範子はそんなかなくなに守り続けたことでさえ、意味のないことだと思い始めていた。
〈 もしも私が、朱美の言う通りにしていたら、私はこの苦しみから逃れることができるのかしら?
だとしたら、私は…… 〉
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