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「うぼ、ぉぉぉあっ」
邦之の唇から どす黒い血が漏れる。
刃が突き刺さっている傷口の隙間からは、鮮血が真上に噴き出し、それが血の雨となって地上へ降り注ぐ。
黒斗は返り血に染まりながらも、邦之の首を上へ上へと持ち上げてゆく。
胸は黒斗が踏みつけて押さえている為、首だけが強引に引っ張られる一方。やがて首の皮膚に裂け目が生じる。
(……………………ち、よ…………)
目に涙を浮かべる邦之の脳裏には、愛する娘の姿が映りだした。
────ごめんな。
────こんなダメな父親で、ごめんな……。
その言葉は声にならず、ただ唇が微かに動くだけで終わった。
やがてブチッと何かが千切れるような音が耳に届くと、邦之の意識は闇の中へ沈んでいった。
(………………終わった、か……)
邦之の首無し死体を見下ろし、黒斗は深い溜め息を吐く。
そんな彼の持つデスサイズの切っ先には、邦之の首が刺さったまま。
黒斗は彼の首を身体から引きちぎったのである。
首の接続部分は無理やり引っ張られたせいで、表皮が薄く伸びきっており、そよ風に吹かれて布切れのようにヒラヒラと揺れている。
その皮膚の下には、千切れた白い骨の先端が僅かに覗いていた。
さらに骨と皮膚の間には、細長い触手のような神経が見える。
そんな首の上にある頭部――邦之の顔は、死に際の強張った表情のまま固まっている。
濁りきった目には涙のあとが はっきり残り、口と鼻からは血液を止めどなく流れていた。
(…………虚しい結末だな……)
邦之の顔を憐れむように見つめる黒斗。
すると、彼の頭頂部が突然 大きく歪み始めた。
(なんだ……!?)
ボコボコと音を立てながら、邦之の頭は へこむことと膨らむことを繰り返し、止まらない。
数秒が経過すると頭だけでなく、顔面や首まで同じように歪み出した。
まるで彼の内側から何かが暴れているようだ。
今までに見たことのない状態に、黒斗は どうすればいいのか分からず困惑する。
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