prologue

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実は告白した時点で、既に茜には2歳の娘が存在していた。 以前 付き合っていた彼氏との間に出来た子供だったのだが、その彼氏は茜とは遊びでやっていたと言い放ち、逃げ出してしまったのだ。 悲しむ茜であったが宿った命を捨てることは出来ず、出産して両親の助けを受けながら香澄を育ててきた。 茜は浩司に告白する際、香澄のことも包み隠さず話したが、彼は それでも茜と夫婦になってくれたのだ。 香澄も浩司のことを「パパ」と慕い、3人家族となった彼女達は幸せに暮らしていた。 だが――結婚してから半年後、浩司の様子がおかしくなり始めた。 優しい一面こそ残っているが、茜が男友達やママ友の夫と話していたり、一緒に居るだけで嫉妬して怒り狂うようになった。 毎晩 茜に「君は俺のものだ」と囁(ささや)き、茜が拒否しても無理やり性行為に及ぶようになった。 あんなにも穏やかだった筈の彼が、独占欲を剥き出しにした嫉妬深い人物となってしまったのだ。 それでも香澄には優しいし、香澄も彼を気に入っているので茜は離婚などはせずに生活を続けていた。 しかし、日に日に浩司に対する不満は大きくなっていくばかり。 そんな時だ。寛に出会ったのは。 寛はテレビの衛星放送チャンネルである、[NMK]の集金人として茜の家にやってきた。 最初 茜は彼を ただの面倒な集金人と見ていたが、話しているうちに紳士的で穏やかな寛に心惹かれ、勢いに任せて帰り際に彼と連絡先を交換したのだ。 自分でも迂闊(うかつ)というか、よく分からない行動だったと思う。 けれども、いざ寛とメールのやり取りをしてみると、彼は昔の浩司と似ていると分かり、彼女は懐かしい気持ちに浸ると同時に、かつて浩司に抱いていた思いを そのまま彼に向けるようになったのだ。
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