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「し、死ぬかと思った……」
引き上げられた兵助は、ゼエゼエと肩で息をしながら、絞り出すように言った。
兵助が手をついている床の、すぐ横の穴では、数十本の槍がたいへんつまらなさそうな様子で先を尖らせている。
「ありがとう、薫ちゃん、ほたる……」
「いやあ~ゴメンゴメン!ほんと」
礼を述べられるも、銃刀法違反女・薫はたは~と笑いながら、軽く謝る。
その横で、パジャマの鎖鎌少女・ほたるもわずかに頭を落とす。
「や、俺が、勝手に落ちたんだし」
兵助は頭巾を外し、廊下に胡坐をかいて言う。
「てゆーか、わざわざごめんね。薫ちゃん。大学大丈夫なの?」
「イヤー、別に全然。面白いし!大学の方も、もう試験期間終わったしレポートはあらかた仕上げたし~」
「そうなんだ。てーか、そんなカッコで寒くないの?」
「え?ぜんぜん」
十二月の夜中、屋外同然の寒さを誇るこの屋敷をTシャツ一枚で元気にうろつく薫は、なるほど軽くクレイジー。もちろん、コスプレニンジャ野郎の言えたことではないが。
兵助の胡乱な目は気にも留めず、薫は床板を蹴った。跳ね上がった板に、兵助救出に活躍したロープを押し込みしまいながら、
「なんかさあ、デッカイ音したよな。あたしらアレで起こされたんだ~」
「したね。ちょっと俺、見てくる。ぜえってえ、アレはち……」
兵助はすっくと立ち上がり、走りかけたが、
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