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「傑作でした……テーブルの下に ずっと隠れていたのに気づかずにイチャイチャ、イチャイチャして……でも、テーブルクロスで見えなかったから、無理もありませんね」
言いながら包丁を引き抜く浩司。
すると動脈が傷ついていたのか、寛の傷口から血が垂直に高く噴き出した。
その血が浩司の顔や身体に付着し、悪魔のような おぞましい姿に変えていくが、それでも彼は眉一つ動かさない。
「あっ、そうそう……牛タンならぬ人間タン、美味しかったですか? 僕は食べたことないから分からないけど、人間のタンも美味しいんですね」
「えっ……?」
浩司が口にした“人間タン”という言葉を聞いて、茜は全身の血が凍りつくような寒気に襲われた。
タンというのは舌のこと。
そして先程 送られてきた写真には、目玉や歯、舌が無くなっている子供の顔が写っていた。
つまり、寛が美味しいと言っていた、入れた記憶の無いタンの正体――そして、茜が口にした丸っこくてプニプニしていて、中からゼリー状の液体が出てきた具材は――
「ぐっ……!! う、んっ!! ぐぉ、えっ」
自分や寛が口にしたものの正体に気づくや否や、急激な吐き気に襲われ、咄嗟に両手で口を覆う茜。
だが その行動は何の意味も成さず、逆流してきた胃液は未だに消化されていない食物と共に、指の隙間から流れ出てきた。
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