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「ああ、本当に毎日 貴女と一緒に居たいよ。顔も性格も美人で、料理も上手。非の打ち所が無いじゃないか」
「お上手ね。褒めたってビーフシチュー以外 何も出てきやしないわよ」
頬を赤らめながらシチューを口に入れる茜。
続いて具材を咀嚼(そしゃく)するが、その際 口内でプチッと何かが潰れたような食感がした。
野菜や肉とは まるで違う妙な食感に、茜は首を傾げる。
(…………なにコレ? 変な味がするけど……)
たった今 噛み砕いた謎の具材に舌で触れてみる。
その具材はブヨブヨとして柔らかく、中からゼリー状の液体が漏れている。
加えて生臭さも広がっており、お世辞にも美味しいとは言えない味であった。
(やだ……作ってる途中で何かが紛れ込んだのかしら)
心当たりは無いものの、気分が悪くなった茜はテーブルの上に置かれたティッシュを3枚ほど手に取り、その中に謎の具材を吐き出す。
すると、この瞬間を待っていたとばかりに、茜のスマホが女性のバラード曲によるメールの着信音を奏でる。
こんな時間に一体 誰からだと、茜は具材が入っているティッシュを丸めてテーブルへ置き、椅子の側にある鞄からスマホを取り出す。
不機嫌そうに目を細めていた茜だったが、届いたメールを確認した瞬間、目が大きく見開いた。
(…………何なの? 何も書かれていないわ)
差出人、タイトル、本文――そんなものは一切 書かれていない空白メール。
画像が添付(てんぷ)されている訳でもなく、真っ白な画面が映っているだけだった。
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