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結局長瀬さんが怒ってる原因は分からないまま、だけどそれでもこの状態が嫌だとは思わず、その後もお互い黙ったままで時間は過ぎて行った
そして間もなくして到着したのは一之瀬先生のマンション前
静かに車が道路脇に停車し車内にハザードランプの音が響くと、私はシートベルトを外して長瀬さんの方へと向き直った
「送ってくれてありがとうございました
長瀬さんも気をつけて行ってきてくださいね」
そう言ってニッコリ笑い車から降りようとドアに手をかけたその時だった
後ろからパシッと右手を掴まれ体が長瀬さんの方へと引っ張られた
「あっ……」
小さく声を上げるが、見上げた先でぶつかった熱い眼差しに思わず息をのむ
そんな私を真っ直ぐに見つめた後、長瀬さんはもう片方の手で優しく私の後頭部を引き寄せて……
そして次の瞬間少し強引に唇を重ねてきた
「……んっ」
突然のキス、しかも車の中、もっと正確に言えば外はまだ明るくもちろん人の往来だってある、そんな中でのキス……
一瞬頭が真っ白になったが、だけどすぐに我に返り長瀬さんの胸を力いっぱい押し返した
……が、割と逞しい身体はビクリとも動かず、あろう事か逆に抱き寄せる腕に力が入ってしまった気がして焦る
「だ、ダメです、離して……」
必死で抵抗するもそう簡単には逃がれられず、それでもやはり場違いなキスに戸惑いを隠せずジタバタする私
するとまるでそれを面白がる様にキスが深くなって行き、意地で固く閉ざしていた私の唇を開けとばかりに長瀬さんの舌が催促してくる
「……!!」
(む、無理!これ以上は無理ですって!)
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